モルヌビッド(モルヌピラビル)

モルヌビッド(モルヌピラビル)の効果

モルヌピラビルは、服用後に細胞内に取り込まれて活性型のNHC-TPに変換され、このNHC-TPが新型コロナウイルスRNAに取り込まれることで、ウイルスゲノムのエラー頻度が増加して、ウイルスの増殖が阻害されます。

1回800mgを1日2回、5日間連続して服用することで、ウイルスの増殖を抑制して重症化を防ぎ、回復までの期間を早めることができます。

新型コロナ(COVID-19)に対し予防効果はありますか？

モルヌビッドは、現時点では新型コロナウイルス(COVID-19)に対する予防的な服用は承認されておりません。
ただし、予防効果の有無についての臨床試験が実施中であるため、近い将来、予防的な服用効果が認められる可能性はあります。

新型コロナ(COVID-19)に対する有効性または有効率を教えて下さい

18歳以上の新型コロナウイルス感染症患者を対象に、モルヌピラビル800mgを1日2回（12時間ごと）、5日間経口投与した臨床試験では、モルヌピラビル800mg投与群ではプラセボ投与群と比較して試験開始後29日目までの入院または死亡割合が6.8%減少したことが示されており、プラセボ群に対するモルヌピラビル投与群の優越性が確認されています。

また、本試験におけるモルヌピラビル投与群の効果は、変異株であるデルタ株、ガンマ株、ミュー株の感染者など、全ての患者で一貫して確認されています。

さらに、モルヌピラビルは非臨床試験において、オミクロン株BA.1、BA.1.1、BA.2、BA.4、およびBA.5系統への抗ウイルス活性が報告されており、実臨床でもオミクロン株流行期での有効性が報告されていることから、オミクロン株についても効果があるとされています。

新型コロナウイルスのワクチンとの関係性

モルヌピラビルの臨床試験は、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けておらず、重症化のリスク因子を1つ以上有している患者さんを対象として実施されており、その結果として有効性が確認されています。

このことから、モルヌビッドは新型コロナウイルスのワクチン未接種者に対しても問題なく用いることができることが分かります。

また、モルヌビッドの作用自体はワクチン未接種者とワクチン接種者の間で差が生じることはありませんが、ワクチン接種者では一般に新型コロナウイルスに対する免疫力が強化されているため、ワクチン未接種者よりも治りが早くなると考えられます。

インフルエンザウイルスとエイズ(HIV)ウイルスに対する効果

モルヌピラビルは開発段階ではインフルエンザウイルスに対する効果も認められています。

このため、モルヌビッドを服用することでインフルエンザの感染症も治療できる可能性はありますが、正式な効果が臨床試験で確認されたわけではないため、インフルエンザ治療を目的とした服用はしない方が良いでしょう。
また、モヌルピラビルがエイズ(HIV)ウイルスに対して効果を示すというデータは存在しておりません。

類似薬との関係性

以下にモルヌビッドと他の新型コロナウイルス治療薬との類似点、相違点について解説いたします。

ファビピラビル

ファビピラビル（商品名：アビガン）は、インフルエンザウイルス感染症の治療薬として開発された抗ウイルス薬です。

新型コロナウイルスに対する効果も期待されて臨床試験が行われていましたが、オミクロン株の拡大によって重症化例が減少し、有効性の検証が難しくなったため、2022年10月に製造販売元である富士フイルム富山化学株式会社は、新型コロナウイルス感染症を対象とした開発の中止を発表しています。

ラゲブリオ

ラゲブリオはモルヌビッドと同じくモヌルピラビルを有効成分とする新型コロナウイルス治療薬です。MSD株式会社が製造販売しています。

1カプセル中に含まれるモヌルピラビルの含有量や用法・用量もモルヌビッドと同じであり、モルヌビッドはラゲブリオのジェネリックのような位置づけと考えることができます。

レムデシビル

レムデシビル（商品名：ベクルリー点滴静注用100mg）は、元々はエボラ出血熱およびマールブルグウイルス感染症の治療薬としてギリアド・サイエンシズが開発した薬です。

現在は新型コロナウイルスに対する効果も正式に認められていますが、注射剤であり、重症化リスクの高い人に対してのみ用いられています。

ソトロビマブ

ソトロビマブ（商品名：ゼビュディ点滴静注液500mg）は、グラクソ・スミスクライン株式会社が製造販売している新型コロナウイルス治療薬です。
注射剤であり、重症化リスクの高い人に対してのみ用いられています。

モルヌビッド(モルヌピラビル)の副作用

モルヌビッドを服用すると下記のような副作用が現れる可能性があります。

一般的な副作用

• ・下痢、悪心、嘔吐
• ・浮動性めまい、頭痛
• ・発疹、蕁麻疹、中毒性皮疹、紅斑、血管性浮腫

下痢、悪心、嘔吐

モルヌビッドの服用により、下痢をしたり、胸がむかむかしたり、吐き気を生じたりする場合があります。
こうした症状は飲み始めに現れることが多く、服用を続けて行くうちに改善することも多いですが、長く続く場合は医師に相談してください。また、市販の下痢止めや吐き気止めを併用することもできます。

浮動性めまい、頭痛

モルヌビッドを服用することで、身体がふわふわと浮くような感じでめまいが生じたり、頭痛が生じたりすることがあります。

こうした症状は飲み始めに現れることが多く、服用を続けて行くうちに次第に改善することも多いですが、長く続く場合は医師に相談してください。また、頭痛には市販の頭痛薬を併用することもできます。

発疹、蕁麻疹、中毒性皮疹、紅斑、血管性浮腫

モルヌビッドに含まれる成分に対するアレルギーなどによって発疹、蕁麻疹、中毒性皮疹、紅斑などの皮膚症状が現れることがあります。
これらの症状は軽度の場合もありますが、アナフィラキシーなどの重篤な副作用の初期症状として現れることもあるので、必要に応じて医療機関を受診するなどしてください。

重篤な副作用

• ・アナフィラキシー

アナフィラキシー

アナフィラキシーとは、アレルギー反応でも特に重篤な症状(皮膚、神経、呼吸器、循環器、消化器などの多臓器に障害が発生するケース)を指します。

急激な血圧低下による意識消失などのショック症状を伴う場合もあります。

本剤の服用後すぐに(数分〜数時間）、下記のような症状が現れた場合にはアナフィラキシーの恐れがあります

• ・皮膚や粘膜の症状（かゆみ、赤み、蕁麻疹）
• ・呼吸器系の症状（咳、くしゃみ、息切れ、息苦しさ）
• ・消化器の症状（腹痛、嘔吐）
• ・血圧が低下する

モルヌビッド(モルヌピラビル)の飲み方（使用・服用方法）

通常、18歳以上の方では、1日2回モルヌピラビルとして1回800mg(4カプセル)、5日間連続して服用します。

モルヌビッドは新型コロナウィルス感染症の症状発現後、速やかに服用を開始することが望ましいとされています。
臨床試験では、症状発現後6日目以降に服用を開始した人では効果が実証されていないので注意してください。

モルヌビッド(モルヌピラビル)を服用できない方（禁忌）

以下の項目に該当される方は、モルヌビッドを服用することができないので注意してください。

• ・モルヌビッドの成分に対して過敏性のある方
• ・妊娠している方、妊娠している可能性のある方

モルヌビッドの成分に対して過敏性のある方

モルヌビッドにはモルヌピラビルと呼ばれる成分が配合されているため、本成分に対して過敏症のある方はモルヌビッドを服用することができません。
服用した場合には、アレルギー症状が現れる可能性があります。

妊娠している方、妊娠している可能性のある方

妊娠したラットにモルヌピラビルを投与した動物試験では胎児毒性（催奇形性、胚・胎児致死、発育遅延、低体重など）が報告されているため、妊娠している方、妊娠している可能性のある方はモルヌビッドを服用することができません。

特に、下記に該当される方は注意が必要になります。

• ・妊娠可能な年齢の方
• ・授乳中の方
• ・18歳未満の方

モルヌビッド(モルヌピラビル)と併用できない薬（併用禁忌・注意薬）

モルヌビッドは以下に示す薬と一緒に服用することはできません。

併用禁忌薬

モルヌビッドの併用禁忌薬は定められておりません。

併用注意薬

モルヌビッドを以下の新型コロナ(COVID-19)治療薬と併用すると、治療の経過に思わぬ影響が生じる可能性があるため、併用される場合は事前に医師に相談するようにしてください。

• ・ファビピラビル（商品名：アビガン）
• ・モルヌピラビル（商品名：ラゲブリオ）
• ・レムデシビル（商品名：ベクルリー点滴静注用100mg）
• ・ソトロビマブ（商品名：ゼビュディ点滴静注液500mg）

モルヌピラビルの安全性について

モルヌピラビルは、新型コロナ(COVID-19)治療薬として、特例承認を受けた薬です。

特例承認とは、感染症などによる健康被害の拡大を防ぐために、他国で販売されている新薬を、通常よりも簡略化された手続きで承認して使用を認めることです。

モルヌピラビルは特例承認を受けた薬のため、国内臨床試験のデータはありませんが、海外で行われたMOVe-OUT（002）試験では以下の結果が得られています。

臨床試験結果

MOVe-OUT（002）試験では、18歳以上の新型コロナウイルス感染症患者を対象に、モルヌピラビル800mgを1日2回（12時間ごと）5日間経口投与し、モルヌピラビルの有効性、安全性等を評価することを目的として、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施し、29日目までの入院又は死亡した被験者の割合を評価しました。

この結果、モルヌピラビル800mg投与群では入院又は死亡割合が7.3%、プラセボ投与群では14.1%となりました。
モルヌピラビル投与群では入院又は死亡割合がプラセボ投与群よりも6.8%減少したことが示されました。

副作用発現頻度は、モルヌピラビル800mg群で12.4%であり、主な副作用として、下痢3.1%、悪心2.3%、浮動性めまい1.3%、頭痛1.0%が認められましたが、重篤なものはなく、安全性についての大きな懸念は無いと言えます。

モルヌピラビル製剤の処方価格・値段・保険適用の有無

モルヌビッドはインドのHealing Pharma社が製造販売している薬のため、日本国内では保険適用外となります。
ただし、モルヌビッドと同成分を含むラゲブリオカプセル200mg（製造販売元：MSD株式会社）は保険適用されており、薬価は1カプセル当たり2357.80円と定められています。

ラゲブリオカプセルはモルヌビッドと同様に、1日8カプセルを連続5日間＝計40カプセル服用するため、保険適用される場合の薬剤料の自己負担額は3割負担で約28,000円となります

2022年12月時点では、ラゲブリオカプセルの患者自己負担分は公費補助の対象となっているため、費用は発生しません

どんな人を対象に処方されるのか

モルヌピラビルは原則として、新型コロナ(COVID-19)感染症に対して、以下に示すような重症度リスク因子を有する人を対象に処方することが推奨されています。

• ・61歳以上の方
• ・活動性の癌に罹っている方
• ・慢性腎臓病の方
• ・慢性閉塞性肺疾患の方
• ・肥満（BMI 30kg/m2以上）の方
• ・重篤な心疾患（心不全、冠動脈疾患、心筋症）のある方
• ・糖尿病の方
• ・ダウン症の方
• ・脳神経疾患（多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症等）のある方
• ・コントロール不良のHIV感染症、またはAIDSの方
• ・肝硬変などの重度の肝臓疾患のある方
• ・臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後の方